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膀胱炎

はじめに

 膀胱炎は下部尿路の炎症で、細菌若しくは真菌などが膀胱粘膜に感染して炎症を起こします。膀胱炎は基礎新患がない単純性膀胱炎と全身的基礎疾患を背景に発症する複雑性膀胱炎に分けられ、更に病勢によって急性と慢性に分けられます。閉経前女性の急性単純性膀胱炎では激しい症状を呈することが多く、閉経後女性では症状が軽微なことも見られ、慢性に経過する場合もあります。慢性複雑性膀胱炎は高齢者に多く、比較的穏やかな症状で経過することが多いと言われています。

 単純性膀胱炎は通常成人男性には発症しません。小児は膀胱尿管逆流症、二分脊椎による神経因性膀胱などを背景にした複雑性膀胱炎が多く、高齢者は神経因性膀胱や前立腺疾患などを背景にした慢性複雑性膀胱炎が多く、顕著な男女差は見られません。

 性的活動期の膀胱炎は圧倒的に女性に多く、ほとんどが急性単純性膀胱炎です。女性は男性に比べて尿道が短いため、細菌が膀胱に侵入しやすい構造になっています。

 また、女性は月経や出産などによって膣内の環境が変化しやすくなるため、膀胱炎にかかりやすくなると考えられています。男性では、前立腺肥大症や尿道狭窄などの病気があると、尿道が細くなって、尿でうまく細菌を洗い流すことが出来なくなり、膀胱炎にかかりやすくなります。

 複雑性膀胱炎を起こす基礎疾患には、尿路の先天異常、片腎、多膿疱性腎、前立腺肥大症、尿路結石、神経因性膀胱、糖尿病、ステロイドや抗がん薬投与中などがあります。

膀胱炎の原因

 原因菌では大腸菌が最も多く(約70%)、次いでグラム陽性球菌(約15〜20%)が多く見られます。慢性複雑性膀胱炎では大腸菌の頻度が減って、弱毒グラム陰性桿菌の頻度が増えてきますので、女性の場合は閉経前後で第一選択となる抗菌薬も変わってきます。

膀胱炎の症状

 排尿痛(特に排尿終末時)、残尿感、尿意切迫感、尿混濁、下腹部不快感や圧迫感が主な症状で、熱は出ません。発熱がある場合は、腎盂腎炎や前立腺炎の可能性が出てきます。

膀胱炎の診断

 尿検査で白血球と細菌が多く(白血球数≧10個/HPF、細菌数≧10^4個/ml)認められれば膀胱炎と診断されます。近年は抗菌薬に耐性をもった細菌も増えてきているので培養検査も行います。血尿を呈することも多く見られますが、血尿がメインで排尿痛や頻尿などの症状が乏しい場合は悪性腫瘍も考慮した検査が行われます。

膀胱炎と同じような症状を起こす別な病気

 膀胱癌、膀胱結核、膀胱結石、過活動膀胱などが比較的多く、まれに間質性膀胱炎、出血性膀胱炎、放射線性膀胱炎なども認められます。これらの疾患が疑われる場合は泌尿器科専門医の受診が必要になります。

膀胱炎の治療

 膀胱炎は早期の治療が重要です。主な治療は抗菌薬の服用です。医師の指示に従い、きちんと薬を飲むことが大切です。一般的には1週間程度の服用で症状が改善します。閉経前ではキノロン系抗菌薬、閉経後、若しくは妊娠中、便秘等でマグネシウム製剤を内服している場合では経口セフェム系抗菌薬が第一選択となります。慢性複雑性膀胱炎の場合は、培養検査の結果をみて、抗菌薬が変更されることもあります。

膀胱炎の予防

 膀胱炎の予防には、以下のポイントが重要です。

水分補給
十分な水分を摂り、尿量を増やし、頻回の排尿をすることで細菌を洗い流します。
適切なトイレ習慣
尿は蓄めずにこまめに排尿しましょう。
適切な衛生習慣
トイレの際は前から後ろに拭くよう心がけ、清潔を保ちましょう。
性交後の膀胱炎の予防
性交直後にトイレで排尿をして膀胱を空にしましょう。
抗菌薬内服中
飲酒は抗菌薬の吸収を妨げる可能性があるので避けましょう。
再発を繰り返す場合
寝る前にクランベリージュースを1本飲みましょう。クランベリージュースは大腸菌が膀胱に付着しづらくする物質を尿中に排泄すると言われています。

まとめ

 膀胱炎は女性に多い病気で、排尿時の痛みや頻尿などの症状が出ます。適切な予防と早期治療が大切です。日常生活での注意や適切なケアを心がけ、症状が気になる場合は医師に相談しましょう。