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急性扁桃炎

はじめに

 扁桃腺と言うのは俗称で、医学的には口蓋扁桃と言い、舌の付け根の左右にあるコブのような組織です。扁桃はリンパ組織で、のどから入ってくる細菌やウイルスから体を守る働きをしています。しかし、免疫力が低下した状況(疲労、睡眠不足、かぜ症候群に罹患など)で扁桃自体がウイルスや細菌に感染し、炎症を起こしてしまった状態が急性扁桃炎です。

急性扁桃炎の症状

 のどの痛み、悪寒、発熱、全身倦怠感、首のリンパ節の腫れなどが主な症状です。扁桃は赤く腫れ、膿栓や白苔の付着をみることもしばしばです。のどの痛みは特に飲み込むときに強く感じられます。発熱は38度以上の高熱になることが少なくありません。悪寒や倦怠感は、全身に炎症が広がっているため起こります。

急性扁桃炎の原因

 急性扁桃炎の原因となる病原体の中では、A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)が原因菌の中で最も多く、発熱やのどの痛みが強く、扁桃に白い膿栓が付着することが特徴です。溶連菌の診断には迅速診断キットも用いられています。

 ブドウ球菌は扁桃炎の原因菌で2番目に多く、発熱やのどの痛みが比較的軽度で、扁桃に白い膿栓が付着することがあります。他にはインフルエンザ菌や肺炎球菌なども扁桃炎を発症することがあります。ジフテリアや伝染性単核球症に急性扁桃炎が合併することもあり、注意が必要です。

 ジフテリアは、白苔が扁桃だけでないく咽頭に広がり、全身状態が悪化します。EBウイルスによる伝染性単核球症は比較的頻度が高く、ペニシリン系薬剤で発疹を呈することがあり診断が重要です。見分け方としては、首のリンパ節が腫れ、肝臓機能が障害され、扁桃のみならず上咽頭炎も併発する場合があるなどです。

急性扁桃炎の治療

 急性扁桃炎の治療は、原因となる病原体によって異なります。細菌感染が原因の場合は、適切な抗菌薬を内服します。抗菌薬の服用により、炎症が治まり、症状が改善します。ウイルス感染が原因の場合は、抗菌薬は効果がありません。鎮痛剤や解熱剤を服用して症状を和らげます。

 のどの痛みがひどく、食事が摂れないときは、点滴をしたり、入院することもあります。急性扁桃炎をこじらせて、扁桃の周りに膿が溜まる「扁桃周囲膿瘍」と呼ばれる状態になると入院治療が必要になることが多いです。

まとめ

 急性扁桃炎は、扁桃にウイルスや細菌が感染して起こる病気です。主な症状は、のどの痛み、発熱、悪寒、倦怠感などです。感染経路は、飛沫感染や接触感染です。治療は、原因となる病原体によって異なります。

 予防には、手洗いなどの手指衛生を徹底することが大切です。