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喘息

はじめに

 喘息と言う病気は紀元前から知られていて、ヒポクラテスの書や中国の古書にも記載があり、死をもたらす病でした。しかし、治療の進歩と伴に高齢者を除けばほぼ喘息死を回避出来るようになりました。厚労省人口動態統計によると、1950年頃は年間約1万6千人の方が喘息で亡くなっていました。有名人では歌手のテレサ・テンさんも喘息の発作で42歳の若さで亡くなっています。その後、1978年に導入された吸入ステロイドの普及に伴って喘息による死亡は減少し、2016年には0歳〜14歳の喘息死が0になりました。

 現在は1950年頃の10分の1になり、毎年1500人前後の喘息死がありますが、65歳以上がその9割を占めています。性別では2002年を境に女性の死亡が多くなりました。喘息の患者さんは、吸入ステロイドをしっかり服用することが大切です。

喘息の診断

 喘息は「気道の慢性炎症を特徴とし、発作性に起こる気道狭窄によって、咳嗽、呼気性喘鳴、呼吸困難を繰り返す疾患」と定義されていますが、明確な診断基準はなく、以下の喘息診断の目安が用いられています。

  1. 発作性の呼吸困難、喘鳴、胸苦しさ、咳嗽の反復
  2. 可逆性の気流制限
  3. 気道過敏性の亢進
  4. 気道炎症の存在
  5. アトピー素因
  6. 他疾患の除外

 1. 2. 3. 6.は診断に重要。4が好酸球性の場合は診断価値が高い。5は喘息の診断を支持する。(喘息予防・管理ガイドライン2018より)

小児喘息と成人喘息

 喘息は大きく二つに分類され、15歳頃までに発症する小児喘息と、中高年になって初めて喘息症状が出現、若しくは小児喘息が大人になって再発する成人喘息に分けられます。

 小児喘息では、アレルギーの関与が認められるアトピー型が多く、特異的 IgE 抗体が高率に認められ、思春期頃に症状が良くなったり、治ってしまうことも多く見られます。

 成人喘息では、アトピー型は6割程度で、残りの4割はアレルゲンが見つからない非アトピー型喘息です。高齢者では慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)が合併するなど治療が難しい場合が見られます。

喘息の発症要因

 個体要因

遺伝素因
喘息そのものは遺伝することはありませんが、アレルギーになりやすい体質は遺伝することがあり、家族の誰かがアレルギー疾患をもっていると、小児喘息になる確率が高くなると言われています。
性別
小児喘息は男児の方が多く、成人喘息は女性の方が多く見られます。

環境要因

大気汚染
煙(粒子状物質)は、喘息を発症・悪化させます。PM2.5、タバコの煙、煤煙、粉塵、黄砂など
メタボリックシンドローム・肥満
内臓脂肪が炎症を悪化させる物質を放出し、喘息を悪化させます。
呼吸器感染症
かぜ症候群やインフルエンザなどは喘息を悪化させます。
アレルゲン
人によって対象は異なりますが、多いのはハウスダスト、花粉、ペットなどです。
成人喘息の5〜10%がアスピリン喘息(酸性NSAIDsに対する過敏症状)と言われています。心臓疾患の治療に使われるβ遮断薬は気管支を収縮させて喘息を悪化させることがあります。アルコールも喘息の症状が悪化することがあるので、注意が必要です。
その他
ストレス、気候、運動、食習慣など

喘息の治療

 吸入ステロイドを基調に薬の処方が行われます。病状に応じて、吸入ステロイド・長時間作動性β2刺激薬配合剤、吸入ステロイド・長時間作動性β2刺激薬・長時間作用性抗コリン薬配合剤が使用されます。他には、ロイコトリエン受容体拮抗薬、ケミカルメディエーター遊離抑制薬、抗アレルギー薬などが処方されることもあります。

 急性増悪(発作)の時は、短時間作用型β2刺激薬を用いますが、改善しない場合は、酸素吸入、点滴などを行い、それでも改善しなければ入院治療となります。

まとめ

 成人喘息は生活の質を大幅に低下させる可能性がある疾患です。しかし、正確な診断と効果的な治療によって十分にコントロールできる疾患でもあります。患者さん自身が病気について理解し、医師と協力して治療計画を進めることが、健康な生活を送るために重要です。