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COPD(慢性閉塞性肺疾患)

はじめに

 日本呼吸器学会から「COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022〔第6版〕」が2022年6月に発行されました。それによると、COPDの定義は、第5版と変わらず、

COPD
タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することなどにより生ずる肺疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に関与し起こる。臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳・痰を示すが、これらの症状に乏しいこともある。

とされています。そして、COPDと混同して用いられることが多い慢性気管支炎と肺気腫については、次のように定義されています。

慢性気管支炎
喫煙や大気汚染などにより、喀痰症状が年に3ヶ月以上あり、それが2年以上連続して認められること。その症状が他の肺疾患や心疾患に起因しないこと。
肺気腫
終末細気管支より末梢の気腔が肺胞壁の破壊を伴いながら異常に拡大しており、明らかな線維化は認められない病変を指す。

 非喫煙者の呼吸機能は23歳〜25歳をピークに加齢と伴に年々低下します。COPDの約半数は成長発達期以降のタバコ煙などによる加速度的呼吸機能低下のためにCOPDを発症し、残りの半数は成長時点での肺の発育障害(低体重児や小児期の肺炎など)による低呼吸機能のために通常の呼吸機能低下速度であってもCOPDを発症すると言われています。

 COPDは予防と治療が可能な疾患であり、日本においてはCOPDで死亡した方の平均寿命は日本人男性の平均寿命を越えていますが、心疾患やサルコペニアなどを高率に合併すると言われており、適切な治療を受けることが大切です。

COPDの症状

 COPDに多い症状は、労作時呼吸困難(息切れ)や慢性の咳嗽と喀痰です。発病初期は無症状ですが、病気の進行と伴に呼吸器症状が現れてきて、運動機能も低下します。

 COPDの併存症としては、栄養障害(脂肪量の低下、除脂肪量の低下)、骨格筋機能障害(筋力低下、サルコペニア)、心疾患(高血圧症、狭心症、不整脈)、脳血管障害、骨粗鬆症、精神疾患(不安、抑うつ)、代謝疾患(糖尿病、メタボリックシンドローム)、消化器疾患(胃潰瘍、胃食道逆流症)などがあります。

COPDの診断

薬物治療

 気管支拡張薬を中心に行われます。作用と副作用のバランスから吸入薬が推奨され、治療効果が不十分な場合には単剤の量を増やすよりも多剤併用が勧められます。他には、喀痰調整薬、マクロライド系抗菌薬なども用いられます。

 非薬物療法

 慢性の気流閉塞を示し、他疾患が除外され、喘息とCOPDのそれぞれの特徴を併せ持つ場合に喘息合併COPDとしています。喘息合併COPDの治療は吸入ステロイドを基本に、気管支拡張薬の併用が推奨されています。

まとめ

 COPDは進行性の呼吸器疾患ですが、早期の診断と適切な治療、管理で進行を遅らせることが期待されます。医師の指示に従いながら、禁煙、薬物療法やリハビリテーションを含む包括的な治療アプローチを受けることが重要です。